「み、水野くん!」 教室の傍の階段をまがったところで水野くんは歩いていた。 わたしが声をかけても歩く速度をゆるめない。 「水野くん、ありがとう!」 一瞬、ほんのちょっとだけ水野くんのあたまが揺れた気がした。 かるく会釈をするみたいに、本当すこしだけ。 わたしの勘違いかもしれないけれどーー 「ばいばい、水野くん!またあしたね!」 そう言って振り返らない彼を見送った