六十年後のラブレター


「もう優ちゃんとは会えん。」

優子の瞳が大きく開く。

「…たっちゃん?」

達也はゆっくりと向きをかえ、去って行った。

消えていく後ろ姿。

「たっちゃん!」

優子は必死で叫んだが、達也は振り向こうとはしなかった。


嫌じゃ…嫌じゃ…!
好きなん!愛しとる!
たっちゃんは…違うんか?


優子の泣き声が森全体に響きわたり、風に乗って達也を追う。

耐えきれなくなった達也は足を止め、耳を塞いだ。