私はその光景に背中を背けて 歩き出した。 そのとき、 「櫻子!」 この声は紫音だ。 どうして? どうして? どうして忘れさせてくれないの? 「なに?」 私は背を向けたまま 返事をした。 「なに?って… 足は大丈夫?」 「…うん。」 何心配してくれちゃってるの? 期待させないで。 忘れさせてよ。 その懐かしい声も。 ほんとは優しい性格も。 ぜんぶ忘れさせてよ…。 「…なんかあったのか?」