校庭の桜はぷっくりとそのつぼみをふくらませ、風に揺れている。

まるで春を待っているかのように。





─一同起立



今日は卒業式。3年間一緒に過ごした仲の良いメンバーとも、この学校ともお別れ。

悲しかったり、ワクワクしたり、色々な気持ちがまざっている複雑な気持ちだ。

「小瀧華!!」



「はいっ!!」



危ない。

空想に浸っていて返事を忘れるところだった。



舞台のしたにはキリっとした顔立ちで見てくれからお坊っちゃんで頭が良いとわかる


あいつがいる。



あっ動いちゃった。


でも、どこから見てもかっこいいものはかっこいい。

ずっーと幼馴染みで家は近所。

いつも当たり前のように近くにいて当たり前のような存在だった。


でも違和感に気がついたのは中学三年生になったばかりのことだった。


「好きです。誠也くんのことずっと見てました。よかったら付き合ってください」


突然見てしまった、幼馴染みへの告白。

始めはどんなものずきだよ。と、その人を笑っていたが、違った。






彼はもてるのだ。




品もよくて、頭もよくて、優しくて、その三つが揃っているあいつはほとんどの女子を虜にした。



まあ・・・・私もその一人なのだけれど。



最初はわからなかった。




恋なんてもの知らなかったからだ。





だけど友達から言われて気がついた。

好きな人ができないのは、いいな。と思っている人が昔からずっーとそばにいるからだった。



そんなことを言われてから、私はやたらと意識してしまった。


すねるときのかお

笑うときの目

優しいしぐさ・・・


だんだんと彼に魅了されていく自分が怖くなった。



だから言わない。

この気持ちはずっと胸に秘めておく。


だってあいつは金持ちで頭が良いヤツがいくような、超エリート高校に進む。


比べて私は、フツーの平凡な学校。


彼とは



すむ世界が違うのだ。





─卒業生退場





記念になるようにと、私は学校の様々場所を写した。


誠也と喧嘩した場所。


翔が告白されているのを見つけてしまったところ。


記憶に残るのは誠也のことばかり・・・・

ドクンドクン・・・



胸が苦しくなる。


もう・・・卒業なん・・・だ・・・



やばい・・・泣きそう・・・



私は気をまぎらわすために、校庭の倉庫に周り、そこの写真を撮ろうとした。




ここは─・・




「好きです」






・・・・えっちょっちょっと待って、



もっもしかして・・・・



私は恐る恐る倉庫の裏をのぞく。


やっぱり学年一の美女、 水城七美さんだった。



告白されているのは─・・・誠也!? せいやだっ・・・・



やっぱしOKするのだろうか。



気になって私は、おとをたてないようにそっと二人を見守った。


誠也は、口ごもったようにそっと呟く。


「ごめん・・・・。



嬉しいけど・・・

俺好きな人いるんだ・・・

結構前から・・・・


ありがと・・・・な・・・・」


えっえっふっ・・・ふった?



あ、あんなかわいくてアタマいい人を?

・・・・いや・・・そっそれより誠也に好きな人がいたの?


しかもけっ・・・結構前から・・・って・-・・



やっぱり私の気持ち言わなくて良かった。




ずっと私の気持ちは胸に秘めておこう・・・・


「ボトッ」


ビックリして携帯をおとしてしまった。



「おっお前・・・・」



誠也が私の存在に気づく。


少し戸惑っていて、どこかいらただしげな、変な表情・・・



「はっ華・・・・聞いてたのかよ・・・もしかして・・・・・」


あっもっとかおが歪んだ。



私がゆっくりうなずくと、誠也は首をしたに向けた。

まるで、私と顔を会わせるのを拒んでいるかのように。


す・・・・と、
誠也がしゃがんで私の携帯をひろいあげる。



ピンク色の時代遅れのガラケー。私が大好きな苺のラインストーンがキラリと太陽に当たって光る。


誠也が顔をあげる前に、私はいった。

「誠也、スッ好きな人いたんだね。


いっ良いの?なっ七美さんふっちゃって。


あっあんなに可愛い人でも敵わないなんて、翔の好きな人はよっぽどすごい人


な・・・・ん・・・だっろう・・・・・」


(ね)という前に頬に何かの感触が残った。

暖かく、それはつーっと顎から下へ落ちていく。



そっそっか私泣いているんだ。そんなに誠也のことすきになっちゃってたんだ・・・。




「おっお前なに泣いてんだよっ!!」



誠也のことがすきだから。

そう言えたらどんなに楽だろう。でも、誠也には好きな人がいる。


さっきみたいな困ったかおはしてほしくない。



私は笑っている誠也が好きだから。



「幼馴染みだから・・・かな?


やっぱりなんかショックじゃん?

あはは・・

前から好きだったのになんで知らなかったのかなあーって・・・。

幼馴染みなのに」



私は必死で涙をぬぐう。

今の言い訳はありえない。

下手すぎる。


幼馴染みだからショックってなに?・・・

かんがえるたびポロポロとなみだがほおをつたい、止まらなかった。


そんな顔を誠也に見られたくなくて私はうつむいた。





「何なんだよっ!!


幼馴染み幼馴染みって!!・・・・」



頭にてをおかれたかと思うと、


ぐいっと腕を引っ張られ、足元がふらついた。




そこから、なぜかすべてがスローモーションのように感じた。
カメラで写真を連写の機能をつけて撮っているときみたいな…コマ撮りで撮影をしている感じ…。


…まさに、あれだった。









普通のリズムに戻ってから、私は誠也に抱き締められているとことを知る。



「なっなっなっせっせっ誠也!!」



思わず声が裏返る。




多分今鏡で自分の顔を見たら、耳まで真っ赤だったと思う。


どっくん


どっくん・・・



血が逆流する。一言で言えばそんな感じ。


あちこちの神経が麻痺して、倒れるかと思ってしまう。






「華はずっと、俺のことを好きだといってくれた。




でも、それは幼馴染みとしての好きだ。



恋人同士の好きじゃない。



・・・・だろう?」



誠也のかおは見えない。いったいなんの冗談だ。
ここで、『違うよ!恋愛として…好きなんだよっ!』

って言えたらどんなに楽だろうか。
でも、そんなこと言えるはずがない。

じぶんの気持ちに蓋をしながら、起こったような口調で誠也にいう。


「なっなにいってんの!?


あっ当たり前じゃない!?」






誠也は私の腰に回している腕を

ぎゅっと強くした。



「おっ俺は違う。


小学校のとき・・・・


いやっもっもっと前から

おれはそう感じていなかった。




おっ俺はずっと、お前のこと・・・・・




すっすきだったんだよっ!!」



えっ?







「せっせいやなにいっ!?」



私は理解不能でフリーズ直前。



誠也が私を好き?


あっありえない。何かの間違い。



だ・・・よ・・・ね?







「あっごっごめんな。


高校別れちまうし・・・・




なっなんか区切りつけたくて・・・」



そういうと、

誠也はスッと私を解放した。




そのかおはまたあの困ったかお。








「忘れてくれ」







そういって歩いていこうと向きを変えた、誠也向かって私は精一杯叫んだ。







「バカぁっ!!!」





誠也は振り向く。驚いたかおで。






「勝手に忘れろとか言うなっ!!



わっ私だってずっと好きでっ・・・




そっそのっ




わっ忘れられるわけないじゃんか!!」


私は拳をしっかりとグーにしてぎゅっと握ると、目も同じようにぎゅっとつぶっていい放った。






「プハッ!!」



えっ?

誠也は急に笑い出した。


そのうちにお腹を抱えて、ゲラゲラと笑い始める。


「ごめんごめん。


なーんか俺ららしいなーって思ってさ。

そんな怒りながら告白するやつ見たことねーよ」



誠也が私に近づいてくる。


私は涙で、あまり彼の姿が見えなかった。


ポロっと頬から水滴が滑り落ち、視界が広がったとき、彼はあの困ったかおではなくなっていた。


笑っていたのだ。



─私の大好きな、あの優しい笑顔で。



誠也が私を包み込む。


ぎゅーっとつよく。でも、どこか優しく。



私は恐る恐る自分の腕を翔のこしにまわし、ぎゅっと力を入れた。


翔が目を開ける。


私も翔を見あげる。




スッ・・・・としせんがからまりあうと、



私たちは、そっと唇を重ねあい、


深く・・・深く・・・






愛を感じた。





~END~