『必ず甲子園へ連れて行きますから、その時は僕と付き合って下さい。』

さわやかな年下男子から、思いも寄らぬ大胆発言をされて、恋愛に全く免疫がなかった私は固まった。

『へ?それって、どういう…』
『そのままの意味です。それまで、先輩の彼氏のポジションは空けておいてください。あ、渡辺先輩の告白に流されて付き合っちゃダメですよ。』

驚いて口を開けっ放しにしている私に、たくさん釘を打ち、あっという間に身動きできないようにしてしまった。

『…うん。』

思わず頷いてしまったのは、夢の甲子園に目が眩んだ訳でも、彼の熱意に流された訳でもないーーー


豪快に縦に落ちるカーブ。
空を切るバット。
まるで、何かのショーを見ているようにきれいにミットに収まっていくボール。

決め球のナックルカーブで三振を取れば、甲子園のスタンドにどよめきが起こった。
大一番でも、彼は緊張することなく大胆に、時に繊細にボールを投げていく。


ーーー彼のナックルカーブに、誰よりも魅せられてしまったのは、他でもない私だったのだ。