現役高校生の傍らで、野太い声を上げる壮年のおじさま達の集団の中心に居るのは、私の父だ。
懐かしの母校のユニホームを羽織り、声援を飛ばしている。
父は30年前、そのユニホームに身を包み、甲子園でプレイした一人だ。

元高校球児で、社会人野球の選手だった父のもとに産まれた私。
女の子だったが、問答無用で「瑠衣(るい)」と名付けられた。
当然のように野球の英才教育を父から受け、当然のように父と同じ高校に入り甲子園を目指した。
ただ、女子だったから、選手ではなくマネージャーになっただけで。
青春の全てを野球に捧げたことに変わりない。
結果的に、甲子園出場にはあと一歩及ばなかった。
だけど、三年間、この仲間と共に同じじ夢を見て、汗を流した日々に、後悔はなかった。