「私の今年、一番ハッピーな出来事かも。」
「そりゃ、どうも。だけど、一番衝撃的だったのは、渡辺だよな。」
「…確かに。」
「あの渡辺が、まさか授かり婚とはね。」
「…しかも、うちの妹と。」
「ははは、どうよ、今年中におばちゃんになる気分は。」
「もう、笑い事じゃないってば。大変だったんだから。お父さんが、聞くなり渡辺君殴っちゃうし。」
「まあ、上司の娘に手出した上に、デキちゃったんだから、当然だろ。」

そうなのだ。
渡辺君は去年から私の五歳年下の妹・球希(たまき)と交際していたのだが、まさかのおめでた発覚により、先月急遽入籍をした。
つまりは、私の義理の弟になったわけで、年末には野球部同期の中で一番にパパになる予定だ。
「よろしく、義姉さん!」と笑って言われて、私は思わず身震いしたけれど、当人たちは至って幸せそうだ。

「ま、渡辺も今度は逃さないように必死だったんじゃねーの?」

冗談混じりに古いネタを蒸し返す、浜中君の背中を思い切り叩いた。