洸は那月の姿を見ると、黒蛇の総長を殴り始めた。
それは我を忘れた龍の如く。
「も……ぃぃや」
そして名前を呼んでも振り向いてくれない洸に、何を勘違いしたのか何かを諦めた那月。
その瞳には色がなくなり、表情の抜け落ちた人形のようだった。
「那月!」
「那月!」
どんなに呼んでも洸の方を見つめたまま反応のない那月。
「那月!」
「那月!」
身体を揺らすと、どうにか反応してくれた。
「那月!しっかりして!」
「け、い……?」
「慶だよ。大丈夫?遅くなってごめん……」
助けるの遅くなってごめん。那月。
滅多に泣く事のない那月の頬には、涙の跡が残っている。
それ程怖い思いをさせたって事だ。


