「慶……久しぶり。」
俺にそう言った那月もまた、洸と同じように"空っぽ"になっていた。
何も映さない空っぽの瞳。
無気力で無表情で、泣いたのか目が少し赤い。
くりくりの大きな瞳に整った鼻。
ぷっくりと触りたくなるような血色の良い唇。
黒のサラサラで綺麗な髪の毛。
スラリと長い手脚。
どこか人間離れした容姿とオーラを持つ那月。
だからこそ、何をしても様になる。
「那月、久しぶりだね。」
お願いだから、洸の元を離れないでやって。
那月も洸も、お互い一緒に居ないと人間らしさがまるでない。
感情表現が苦手な2人は、だからこそ余計に人間離れして見える。
でも俺の願いは虚しく、那月は俺たちの間をすり抜けて屋上を出て行った。
シーンと静まり返った屋上。
洸は那月からの"拒絶"に相当なショックを受けたみたいで、さっきの体勢のまま
固まっている。
俺も、まさか洸を拒絶するとは思わなく驚いている。
何とも言えないこの重い空気。
それを払拭するかのように必死に話をする翔と理人。
「洸、説明してくれよ!」
「あの子誰なの?一体。」
ただ、今の洸と俺にはとてもじゃないけど話せる状態ではないし
なによりその話題はミスマッチだ。


