入り口の前で止まっている俺たちは、フェンスの近くで抱き合っている2人の会話は聞こえない。
だけど、2人だけの世界を作っているのは確かだ。
洸に抱きしめられている那月は、洸の背中に腕を回していない。
ダランと垂れ下がっている。
……おかしい。
「なぁ慶。もしかして洸が今までずっと探してたのってあの女か?」
翔の問い掛けに、
「あぁ。」
俺は2人を見ながら答える。
那月が俺たちの元から突然消えて3年。
洸は毎日時間さえあれば街に出て那月の居場所を探していた。
誰の力も借りず、1人で。
周りに力を貸してもらえば一瞬で見つかる筈なのに、あいつは「俺が見つけないと意味がねぇ。」そう言って3年も探していた。
やっと、洸が人間らしく元に戻ってくれる。
呼吸をするだけで常にボーッとしていて人形のように座っていただけの洸。
那月が居ないと、洸は人間らしさが失われる。
2人を見ながらそんな事を考えていると、那月が洸から離れようとしている。
「………」
そして洸から逃れた那月は、帰ろうと身体を向けると俺たちの存在に気づいた。


