Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~

夏休みが終わる頃、隣の家に本を返しに行った。

タケルくんのお母さんが出迎えてくれた。

「ゆっくりしていってね」

「はい」


タケルくんは机に向かっていた。

私が肩を叩くと、イヤフォンを外した。

借りっぱなしになっていた本を差し出した。



「長く借りてて、ごめんね」

「読んだ?」

「実はまだ読めてないの…」


タケルくんの部屋に入るのは久しぶりだ。

「座ったら?」

「うん」


机の上に、数学の先生が薦めていた参考書があった。


「受験、大変?」

「超大変。部活引退した」

「志望校は決まったの?」

「だいたい決まった」


タケルくんのお母さんが、飲み物を持って表れた。


「この部屋、冷房が古いから暑いでしょう」


全然、暑くない。


「暑くないです」


お母さんが、じっと私を見つめた。