「余所見してんじゃねぇぞ!!」



猛スピードで走ってくる川瀬翠斗。


さっきよりも、動きが読める。



「ぅおらァッ!!!」



繰り出されるパンチをよけながら、こっちからも攻撃をする。


怒りで我を忘れている川瀬翠斗には、もう鋭さなんてない。


ただがむしゃらに、僕を殴ろうとしているだけだ。



「オラァッ!!」



真正面から、腹を蹴られる。



「ハハハッ……!」



余裕そうに笑う川瀬翠斗。


笑っていられるのは……今のうちだ。


腹に刺さった右足を両手で掴み、腹から引きはがす。



「は、離せ!!」



片足で立ち、不安定になった川瀬翠斗は暴れまくる。


そんなに暴れたら……倒れるよ?



「離せよっ!!」


「分かった」



川瀬翠斗の望み通り、パッと手を離す。



「っうわ!!?」



───ゴンッ!!



反動で後ろによろけた川瀬翠斗は……床に頭を打ち付けられ気絶してしまった。


だから、言ったのに。


ふぅ、とため息をついて周りを見渡す。


そこにいたはずのヤンキー集団は……いつの間にか、逃げ去ってしまっていた。