「蓮央、早く準備しないと遅刻するよ!」 「……うるせぇ寝かせろ…………」 「だめだって!」 「ん……キスしてくれたら起きる」 「バカ!!」 ……朝からこんなに賑やかな夫婦はどこにもいないと思う。 学校指定のブレザーを羽織りながら苦笑いし、カバンを持つ。 「父さん、母さん、行ってきます」 「行ってらっしゃい、葵!気をつけてね」 「うん」 父さんはまだ眠そうだったけれど、僕の方を見て微笑んで手を振ってくれた。 それだけで、僕はなぜか嬉しくなる。