幸せの定義──君と僕の宝物──

ある程度お腹が満たされたのか、トモの箸を進める勢いが落ち着き、ユウはお酒をビールからウイスキーの水割りに変えた。

「明日は仕事夕方からだしな。今日はゆっくり飲もうぜ。」

ユウが水割りを差し出すと、酒豪のトモが自信満々に笑う。

「おっ、言ったな?寝かさねぇぞ?」

「オレはつぶれない程度に飲む。」

ユウも自分のグラスに氷とウイスキーとミネラルウォーターを入れてかき混ぜた。

「はぁ、うまいな。」

「そうか?トモは水割りが好きなんだな。」

「酒はなんでも飲む。」

「昔からそんなに強かったのか?」

「いや…。昔は酒もほとんど飲まなかったし、タバコも吸わなかった。」

トモの一言に、ユウは灰皿を用意していなかった事に気付いて立ち上がった。

「あ…そうだ。灰皿だな。」

ユウは、レナが妊娠してから、家の中でタバコを吸うのをやめていた。

時々ベランダに出て吸う事もあったが、レナがつわりのひどかった時は匂いに敏感で、タバコを吸った後は髪や体に付いた匂いがなかなか消えず、タバコを吸ってからしばらくはレナに近寄る事ができないのでやめた。

「ユウ、家でタバコ吸わないのか?」

「レナが妊娠してからだよ。外では普通に吸ってる。今はレナ入院してるし、家の中で吸っても大丈夫だ。」

「そうか。妊婦の旦那も大変なんだな。」

二人で水割りのグラスを傾けながらタバコに火をつけた。