幸せの定義──君と僕の宝物──

「昔、レストランの厨房にいたんだろ?普段は料理しないのか?」

「しねぇな。厨房にいたって言っても、材料を用意されたマニュアル通りのもんしか作れねぇもん。自分のために作る気にもならねぇし。」

「それはそうかも。オレだって自分一人のために料理をするのはめんどくさいもんな。」

ユウは出来上がった料理や取り皿などをテーブルに並べた。

「何飲む?まずはビールでいいか?」

「ユウにお任せ。」

「じゃあ、とりあえずビールで。」

二人で向かい合って席につき、グラスに注いだビールで乾杯をした。

「さぁ、どんどん食え。」

「おぅ。いただきまーす。」

トモは嬉しそうに笑って、取り皿に取ったユウの手料理を頬張る。

「うまっ!!ユウ、腕上げたな!!」

「そうか?簡単なもんばかりだけどな。」

「いや、マジでうまい。片桐さんみたいなキレイな奥さんもらったユウが羨ましいとずっと思ってたけど、今は料理上手なユウを旦那にした片桐さんが羨ましい。」

「大袈裟だっての。」

二人でビールを飲みながら食事をした。

トモは美味しそうにユウの手料理を口に運びながら、他愛もない話をして笑う。

それはロンドンにいた頃にユウが作ってくれた料理の中でハンバーグが一番好きだったとか、帰国してから自分でも作ってみようと見よう見まねで作って大失敗したとか…。

いつものように明るく振る舞っているトモの様子に、ユウはどこか痛々しささえ感じた。