幸せの定義──君と僕の宝物──

夏至を過ぎたとは言え、日が長いこの時期は、夕方になっても外はまだ随分明るい。

ユウとレナは時折、他愛ない会話を交わしながらのんびりと過ごしていた。

レナは右手でユウの手を取り腕時計を見ると、その手をそっと握った。

「ねぇユウ、今日はもういいよ。」

「えっ?」

「トモさんと約束してるんでしょ?」

ユウも腕時計を見る。

時計の針は、5時を少し過ぎたところをさしていた。

「あぁ…。でもまだ早いし…レナの夕食もまだ済んでないしな。」

「私なら大丈夫。トモさんの事、気になってるんでしょ?」

「まぁ…それはそうなんだけど…あんまり早いとトモが気を遣うだろ。やっぱ、オレがもう少しレナと一緒にいたいし。」

「そう…?私は嬉しいけど…。」

「それに…。」

「ん?」

ユウはイスから立ち上がり、ベッドの縁に腰掛けて身を乗り出した。

「今日はまだ、レナとキスしてなかった。」

「ふふっ…。ユウ、甘えんぼ。」

ユウがレナの唇にキスをすると、レナは愛しそうにユウの髪を撫でた。

「子供が生まれるまでは、オレも目一杯レナに甘えとかないとな。」

「生まれても、甘えていいよ?」

「たまにはな。」

ユウがレナの頬に手を添えてもう一度唇を重ねると、レナはまたユウの髪を撫でながら甘いキスに応えた。

重ねあった互いの唇の柔らかさや触れ合う手のぬくもりは、二人が過ごしてきた長い時や、乗り越えてきた涙さえ包み込むように優しい。

二人は、一緒にいられる今だからこそ得られる幸せを、しみじみと噛みしめる。

夕陽の射し込む病室で、二人は時折見つめ合って微笑みながら、愛しそうに何度も唇を重ねた。