「もしさ…今、あの子と会えたらどうする?」

リュウが尋ねると、トモは小さくため息をついて苦笑いを浮かべた。

「さぁな…。会えたってさ…多分もう結婚なんかしてさ…子供もいたりして…幸せになってんじゃねぇか?」

「あぁ…。オレらももう33か…。今年の秋には34だもんな。」

「オレは冬だけどな。ハタチの頃の短い恋なんて、あの子はもう忘れてんだろうな…。」

トモがタバコを口にくわえると、リュウがライターで火をつけた。

二人の吐き出したタバコの煙が、交じり合って流れていく。

少しの間、二人は黙ってタバコの煙を目で追っていた。

「悪かったな…トモ…。オレのせいで…。」

リュウがためらいがちに小さく呟くと、トモはリュウの背中をバシンと叩いた。

「もう言うなって…。リュウだけのせいじゃない。あれは…弱くて頼りなかったオレのせいなんだ。それに…もう昔の話だ。悪いな、古い話持ち出して…。」

トモは微かに笑みを浮かべて、胸につかえた何かを飲み干すように水割りを煽った。

その横顔を見ながら、リュウはそっとため息をついた。

(トモ…今でもやっぱり、あの子の事忘れられないんだな…。)