「リュウに婚約者?そりゃめでてぇじゃん。いつ結婚すんだよ。年内か?年明けか?」

「えーっと…それはちょっと無理です…。」

「なんでだよ。結婚すんだろ?早くしちまえばいいじゃねぇか。」

「いや…それはその…。」

歯切れの悪いリュウに代わって、タクミが答える。

「まだ高1で15歳だから、せめて彼女が高校卒業するまでは無理なんだよね?」

「はぁっ?!オマエら一体どうなってんだよ!!」

「いや…ヒロさん、オレとハヤテは関係ないと思いますよ…?」

「タクミ…オマエってやつは…!!」

「オレ絶対タクミは敵にまわさない…!!」

「タクミ…この上なく楽しそうだな…。」

子供のように無邪気に笑う悪魔のようなタクミに、他のメンバーたちは恐れおののいた。

「だってさぁ。大事な人ができた事は、親父にはちゃんと知らせとかないと。幸せな報告なんだからいいでしょう。」

「他人事だと思いやがって…。」

自分の事は何も言わないのに、嬉しそうに笑っているタクミに、ヒロは怪訝な顔をした。

「タクミ、オマエも結婚でもすんのか?」

「しませんよ。相手もいないのに。」

「しねぇのかよ!!じゃあなんでそんなに幸せそうな顔してんだ?」

「オレねぇ、オレ以外の誰かを本気で好きな女の子しか好きになれないから、自分を好きな子とは付き合えないの。好きな子が幸せなら、オレも幸せなんですよ。」

タクミらしいと言うか、理解不可能と言うか、とにかく底知れぬ謎を秘めたタクミに、みんなはやれやれとため息をついた。

「やっぱくせ者だな。オマエら、タクミにカミさん狙われねぇように気を付けろよ。」

よほど驚き疲れたのか、ヒロも盛大にため息をついた。

「まぁいいや。トモ、リュウ、そのうち未来のカミさん、オレにも紹介しろよ。トモは子供もな。」