幸せの定義──君と僕の宝物──

それから二人は黙り込んだまま、少しの距離を置いて歩いた。

部屋に戻ってもハルは、リュウと目を合わせようとも、口を聞こうともしないで、何も言わずシャワーを済ませると、おやすみの一言もなくベッドに入った。

いつもは嬉しそうに笑って、リュウにしがみつくようにして寝るハルが、リュウを拒絶するかのように背を向けていた。

ハルを傷付けてしまったかもと思いながらも、何も言えないまま目をそらしていたリュウは、シャワーを済ませ冷えたビールを飲みながら、ハルの背中を見つめた。

リュウはビールを飲み終わると、ハルの隣に横になって、ハルの寝顔を覗き込んだ。

(泣いてたのか…。)

いくつもの涙の跡が残るハルの頬をそっと撫でて口付けると、小さな声で呟いた。

「ハル…ごめんな…。」




リュウは、まだ寝息をたてているハルを優しく抱きしめた。

(平気なわけねぇだろ…。)

ハルを突然失う事が怖くて予防線を張る自分に嫌気がさした。

いつの間にこんなにハルを好きになっていたのだろう?

気付けばハルが自分にとってなくてはならない存在になっている。

(やっぱ…誰にも渡したくねぇ…。)

リュウはハルを抱きしめる腕に力を込めた。

「ん…とーちゃん…?」

リュウの腕の中でハルが目覚めた。

「ハル…昨日はごめんな…。」

「……とーちゃんは、ハルがいなくなっても平気なの?」

「全然…平気なんかじゃねぇ…。」

声を絞り出すように答えるリュウの顔を、ハルはじっと見つめた。