幸せの定義──君と僕の宝物──

ユヅルが生まれた翌日。

ライブ明けで休みだったリュウは、いつもよりゆっくりと目覚めた。

前日の疲れからか、ハルは隣でまだぐっすり眠っている。

リュウはハルの寝顔を眺めて、頭を撫でた。

(昨日、よっぽど疲れたんだな…。)



夕べ、レナの病院からの帰り道、リュウとハルは個室のある和食レストランに立ち寄り食事をした後、人通りの少ない夜道を手を繋いで歩いた。

「なぁ、ハル…。」

しばらく黙ったまま歩いていたリュウが、ハルの顔を見ないようにして話し掛けた。

「ん?何?」

「もしも、いつか…オレより好きな男ができた時は…そいつの所に行けよ。」

その言葉にハルは思わず立ち止まり、目を大きく見開いてリュウを見上げた。

「なんで…そんな事言うの?」

「もしもの話だ…。オレといるより幸せだって思える男が現れたら…オレに遠慮なんかしないで、そいつに幸せにしてもらえ。」

ハルは繋いでいたリュウの手を振り払った。

「あっ…オイ、ハル…。」

リュウは、溢れる涙を手の甲で拭いながら足早に歩くハルを追い掛けて、腕を掴んだ。

「離して…。そんな事言うとーちゃんなんか、大嫌い…。」

ハルの泣き顔に、リュウの胸がしめつけられるように痛んだ。

「もういい…わかった…。とーちゃんは、ハルがいなくなっても平気なんだね。」

「ハル…オレは…。」

ハルは腕を掴んでいたリュウの手を、もう片方の手でほどいて背を向けた。

「もう何も聞きたくない。」