幸せの定義──君と僕の宝物──

分娩室に入ったレナは、分娩台の上で強烈な痛みと闘っていた。

「さあ片桐さん、いよいよね。赤ちゃんの頭、見えてるわよ。この次の波が来たら、頑張りましょうね。今はまだ、いきんじゃダメよ。」

痛みが去ったと一息ついたのも束の間、あっという間に次の波がやって来た。

子宮の収縮に合わせて、いよいよお産が始まった。

「鼻から大きく息を吸ってー…ハイ、止めて、いきんで!!」

山田先生に促され、レナはバーを握りしめ、必死で下腹部に力を入れる。

陣痛がおさまると、山田先生はいきむのをやめるように指示を出す。

「ハイ、やめて。大きく息を吐いて、吸って…赤ちゃんが苦しくないように、しっかり酸素を送ってあげてね。」

つらそうな表情で額に汗をにじませているレナの隣で、ユウは優しく声を掛ける。

「レナ、頑張れ。もう少しだよ。」

痛みに耐えながら何度かそれを繰り返した時、レナは体内からスルリと何かが抜け出たような感覚を覚えた。

そして、小さくも力強い赤ちゃんの産声が、ユウとレナの耳に響いた。

「8月8日午後8時8分、お生まれになりました。おめでとうございます。元気な男の子ですよ。」

「うわ…ゾロ目…。ありがとうございます!!レナ、頑張ったな!!」

ユウは感極まってウルウルしている。

「それじゃお父さんは少しの間、外でお待ちください。お母さんはもうひと仕事ね。」


ユウが分娩室を出た後、レナは出産が済んで不要になった胎盤などを体外に出す後産、拡がった子宮を早く戻すための腹部のアイシング、血液などが付着した汚れをキレイに拭き取ってもらうなど、いくつかの処置を施された。

吸引などの処置を施され、産湯でキレイにしてもらった赤ちゃんは、レナの胸の上に乗せられた。