幸せの定義──君と僕の宝物──

ハルは、助産師とユウに付き添われ分娩室に向かうレナの後ろ姿を病室の戸口で見ていた。

「ハル。」

優しく名前を呼ぶ声に振り向くと、そこにリュウが立っていた。

「あ…とーちゃん…。」

「よく頑張ったな。」

リュウはハルの頭を優しく撫でた。

「うん…。ハル、怖かったけど…とーちゃんに言われた通り、頑張ったよ。」

「いい子だ。」

リュウに抱き寄せられ、ハルはリュウの広い胸に顔をうずめた。

「子供じゃないもん…。」

「わかってるよ。」

リュウはハルの頭をポンポンと優しく撫でた。

「これから生まれるな…。どうする?待ってみるか?」

「うん…。赤ちゃんに、会いたい。」


リュウとハルは、病室でレナの赤ちゃんの誕生を待つ事にした。

病室の隅のソファーに並んで座ると、ハルがリュウの手を握った。

「どうした…?」

「ママも、あんなふうに痛いの我慢してハルを産んでくれたの?」

「ああ…。ハルが生まれる時、オレはそばについてた。姉貴、痛いだのなんだのギャーギャーわめいて、オレに当たり散らしてたけどな…。それでも16時間も頑張ってハルを産んだ。」

「そんなに?」

「ああ。オレ、生まれたてのハルだっこしたんだぞ。そん時のオレより、今のハルの方が2つも歳下だ。オレがハルと一緒になるって…ハルとユウたちの子供が一緒になるよりまだ歳が離れてんだな。」

「とーちゃんは…そんな子供のハル、嫌い?ハルとじゃ、幸せになれない…?」

「バカ…。嫌いなんて言ってねぇ。ただな…ハルが、いつか…。」

“ハルがいつか、他の誰かを好きになった時には、遠慮しないでそいつの所に行け。”

そう言いかけて、リュウは口をつぐんだ。

「いつか…何?」

「いや…なんでもねぇ…。」

ハルが幸せなら相手は自分でなくてもいいと思っていたはずなのに、ハルを離したくない。

ハルの思う幸せの中に、1日でも長くいたい。

いつかハルの幸せな願いを叶えるのは、自分でありたいとリュウは思った。