幸せの定義──君と僕の宝物──

それから数時間。

外が暗くなってきた頃、レナの陣痛が強くなり始めた。

「レナさん、大丈夫?」

「うん…まだ大丈夫…。」

陣痛の痛みを堪えるレナの腰をさすりながら、ハルは壁に掛けられた時計を見上げた。

(まだ大丈夫って…。時間も経ってるし、さっきより随分つらそうなのに…。)

レナの陣痛の波が引いたのを見計らって、ハルは飲み物を買いに行く事にした。

「レナさん、喉渇いたでしょ?販売機で飲み物買って来ますね。」

「うん…。あっ…!!」

突然、レナが驚いたように声を上げた。

「え?」

何事かとハルが振り返ると、レナは呆然としている。

「破水、したかも…。」

「え?破水?!」

ハルはなんの事かわからずオロオロしている。

陣痛の痛みを逃すラクな姿勢を取るために、ベッドの真ん中辺りにぺたりとうずくまるように座っていたレナは、破水した事に動揺して身動きが取れず、枕元のナースコールに手が届かない。

「ごめん、ハルちゃん。ナースコール押してくれるかな…。」

「ナースコール…?これ押せばいいのね?」

ハルがナースコールを押すと、すぐに助産師が駆け付けた。

「片桐さん、どうしました?」

「破水、したみたいです…。」

レナが答えると、助産師がベッドの上に敷かれた防水シートが濡れている事に気付いた。

「あら、ホントね。じゃあ、まずは着替えましょう。ゆっくりでいいから、慌てないでね。」



それからレナは、分娩着や産褥用の下着などを新しい物に取り替え、濡れたシーツを外してもらってベッドにうずくまった。

「破水したから…これから陣痛が進んで思ってたよりかなり早く生まれると思う…。」

「えぇっ?!」

予想外の出来事にハルはうろたえた。

「ユウ、間に合わないかも…。」