幸せの定義──君と僕の宝物──

「昔からそうなんだよ。若い頃は好きだと思った相手に彼氏がいたら、奪ってみたりもしたけどな。でも、相手がオレの事を好きになると、なんか違うなと思うわけ。オレが好きだったのは今の彼女じゃないって。元彼を好きだった彼女が好きだったんだって気付いて終わるの。」

「それだと…タクミはずっと、好きな人と幸せにはなれないじゃん。」

「好きな人とは幸せにはなれないんだけど…好きな人の幸せそうな顔を見てるのが、オレの幸せなんだろうな。ユウがあーちゃんをずっと幸せにしてくれたら、オレもずっと幸せでいられるって事かな。」

「オレには理解できないよ…。」

どうしてタクミがそうなったのか、タクミの気持ちはユウには理解できなかった。

(誰だって好きな人と幸せになりたいはずなのに…。)

「最初からタクミの事が好きだって思ってる人を好きにはならないのか?」

「それがならないんだよねぇ…。なんでだろ?オレにもわからないんだ。」

「オレはやっぱり、他の人と幸せな人を見て幸せだと思ってるタクミより、タクミを好きな誰かと幸せになるタクミが見たいんだけど。」

「そんな事、あるといいんだけどねぇ…。」

タクミは笑いながら、グラスを傾けた。

「またユウがあーちゃん泣かせるような事があったら、オレはいつでもあーちゃんを幸せにするつもりでいるよ?」

「それはもうない…。」

「それならそれでいいや。あーちゃんが幸せなら、オレも幸せだから。」

思っていたよりも複雑なタクミの内面は、ユウにとっては理解し難い謎ばかりだった。

(タクミって推理小説の100倍は難しい…。)