それから自分の部屋に戻ったリュウは、ゴロリと横になってルリカの言った事を考えていた。

(ちゃんと向き合ってやってよ、って言われてもなぁ…。どうすりゃいいんだ?)

小さい頃ならまだしも、今のハルの“好き”と言う気持ちを上手に笑って聞き流せるほど、自分は器用ではないとリュウは思う。

ハルの事は間違いなくかわいい。

好きだと言われる事は、けっして迷惑ではないし、悪い気はしない。

それでもやっぱり、相手はハルだ。

身内である事や歳の差を考えないで、今のハルを一人の女性として見る事は、自分にはできない。

だけど、ハルと一緒に眠った夜は、歳の差も何もかも気にならなかった。

ただすべてを包まれているように心地よくて、温かかった。

(ハルが大人になっても歳の差が縮まる事はねぇけど…ハルがハタチになったらオレは38か…それくらいの歳の差カップルとかって珍しくねぇよな…。そうか…あと4年ちょっともすれば……って、オレ何考えてんだ??)

突如浮かんだその考えに戸惑い、リュウは慌てふためいて起き上がった。

(いやいやいや…。今のナシ、今のはなんかの間違いだ!!周りがいろいろ言うから、オレまでおかしな事を…!!)

誰に言い訳をする必要もないのに、リュウは必死で自分に言い訳をしながらタバコに火をつけた。

(調子狂うな…。なんなんだ、一体…。)

リュウは流れて行く煙を何気なく目で追いながら、ハルの涙と遠い日の恋を思い出していた。

叶う事のない片想いの恋は苦くて切ない。

手を伸ばせば触れられる場所にいるのに、その人が自分のものになる事はない。

どんなに想っても届かない想いは、行く宛もなくいつまでも心をさまよい続ける。

(オレはハルに、昔のオレと同じ想いをさせているんだな…。)