幸せの定義──君と僕の宝物──

視線をそらし黙り込んだまま何も言えないでいるリュウに、トモは話を続ける。

「そんな事、ずっとリュウにも言った事ないのにな。なんでかな…。もしかしたら、オレじゃなくてリュウの子だったら、アユちゃんは素直にリュウに頼ったのかも知れないとか思ったら悔しくて…気がついたら、そう言ってた。」

「バカだな…。そんなわけねぇだろ…。」

リュウはタバコに口をつけ、煙を吐きながら、短くなったタバコを灰皿の上でもみ消した。

「オレはあの時…離れて行こうとするアユちゃんを繋ぎ止める事しか考えてなかった。でも、結局そのせいでアユちゃんを傷付けて、また迷わせてさ…。だからアユちゃんはリュウのところに行ったんだって、ずっと思ってたのに…。アユちゃんは…妊娠した時からオレの子だってわかってたから産むのを迷わなかったんだってさ…。」

リュウは少し考え込んだ後、新しいタバコに火をつけ、静かに煙を吐き出した。

「オレが最後に会った時、アイツな…髪切ってくれって言ってさ。そういう約束してたから切ってやったんだけどな。ずっと黙ってると思ったらさ…彼と別れた…彼の事、ホントに好きだった、って…泣いてた。その時アイツが泣いたのは、トモの事話した時だけだった。オレとの別れ際なんか、振り返りもしなかった。」

リュウはまたタバコに口をつけ、煙を吐き出して、笑みを浮かべた。

「最初から最後まで、アイツが好きだったのはオマエだけだったんだ。アイツはオレの事なんか、1度も見てなかった。オレはただ偶然近くにいただけなのに…バカみたいに勘違いして…情けねぇな。」

「リュウ…。」

「結局、オレが二人を引き離したようなもんだ…。ホントに悪かったな…。オレは今度こそオマエらの幸せを邪魔しねぇように、大人しくしてるわ。」