幸せの定義──君と僕の宝物──

「あのさ…。」

沈黙を破ったのはトモだった。

「なんの相談もしないで、悪かったな…。」

リュウはタバコに口をつけ、静かに煙を吐き出した。

「オレに相談も何も…オマエらの事だろ?」

「うん…まぁ…そうなんだけどさ…。」

トモは改めて、マサキと偶然会った時の事や、その後アユミと再会した時の話をした。

リュウは黙ってトモの話に耳を傾けていた。

「会うのが怖いとか思ってたはずなのにさ…会ったらそんな事考える暇なんてなかったよ。」

「そうか…。」

注文していた料理が運ばれてきて、二人はしばらく黙って食事をした。

リュウが食事を終えてアイスコーヒーのストローに口をつけた時、トモが箸を置いて口を開いた。

「二人で話し始めた時にな…マサキはオレの子なんだろって聞いても、アユちゃん何も言ってくれなくてさ…なんか腹が立ってきて…なんで何も言ってくれないんだって、つい怒鳴っちゃってさ…。」

トモは、アユミが妊娠した事をなぜトモに言わなかったのかを話した後、言いにくそうに声を絞り出した。

「オレ…妊娠したのがリュウの子なら言えたのかって、アユちゃんを責めた…。最低だろ。」

トモの言葉を聞いて、リュウの胸がしめつけられるように痛んだ。

長い間ずっとリュウを責めた事のなかったトモが、本当は親友のリュウにアユミを奪われてしまった事に傷付きながら、自分自身とアユミを心の中で責めていたのだとリュウは気付いた。

(バカだな…なんでもっと早くホントの事言わねぇんだよ…。責めるならオレを責めれば良かったのに…。)