その頃、ハルは電車を降り、自宅に向かってとぼとぼと歩いていた。


ハルが目覚めた時、リュウはぐっすりと眠っていた。

着替えてキッチンを片付けたハルは、テーブルの上にメモを残し、少しの間リュウの寝顔を見つめた後、小さく“サヨナラ”と呟き、起こさないようにそっとリュウの頬にキスをして、静かに部屋を出た。



ハルは通り道にある公園に立ち寄り、ベンチに座ってため息をついた。

(あーあ…。フラれちゃったな…。)

15歳の自分が18も歳上の叔父のリュウを異性として好きなのは、そんなにおかしい事だろうか?

どんなに好きでも受け入れてもらえない事はわかっているのに、リュウの事が好きで好きで、どうしようもない。

本当はいつも一緒にいたいし、もっとリュウに触れたいし、触れて欲しい。

小さな子供をかわいがるようにじゃなくて、ちゃんと異性として愛して欲しい。

ハルが大きくなるにつれてそう思うほど、リュウが距離をとろうとしている事に、ハルは気付いていた。

(血も繋がってないのに、なんで身内なんだろ…。歳が離れてても身内じゃなかったら…恋愛とか結婚とか、望んでもいいって事?)

どんなに背伸びをして大人ぶっても、キスをしても抱きしめても、リュウにとって自分はまだまだ子供の、姪のハルでしかない。