幸せの定義──君と僕の宝物──

「ああもう…。好きにしろ。」

リュウはため息をつきながらベッドに入った。

ハルもベッドに入りリュウの隣に横になった。

「とーちゃん、腕枕して。」

「いやだ、断る。」

「この前はしてくれたのに。」

「覚えてねぇな。さっさと寝ろ。」

リュウが背を向けると、ハルはリュウの背中にしがみついた。

(…っ…だから…。)

体を密着させてしがみつくハルから、リュウの肌に体温が伝わってくる。

背中に押し当てられた柔らかい感触に、リュウは居心地の悪さを感じた。

(オレはなんもしてねぇのに…なんだ、この妙な罪悪感は…。ってか、胸当たってるっつーの!!しかもなんか発育良過ぎんだろ?!なんとかなんねぇのかよ…。)

リュウはそれに気付かないふりをして、ベッドサイドに置いたリモコンで部屋の灯りを消し、もう寝てしまおうと目を閉じた。

真っ暗な部屋の中で、二人の呼吸だけが響く。

「とーちゃん…。」

「…なんだ?」

「なんか…あった…?」

(えっ…?)

リュウは驚いて目を開いた。

真っ暗な部屋の中に、カーテンの隙間から街灯の明かりがうっすらと射し込む。

「とーちゃんはなんにも言わなくても…ハル、とーちゃんが元気ない時、わかるんだよ。」

「……。」

ハルが小さい頃、リュウがどうにもならないアユミへの想いに悩み、ロンドンに行くかどうかを迷っていた時、ハルがリュウを元気付けようと、保育所で作った折り紙のチューリップを差し出して、“とーちゃんが元気ないと、ハル、泣いちゃうの”と言った事があった。

リュウは、ハルはいつでも自分を見てくれているんだなと、嬉しく思った事をぼんやりと思い出していた。

(やっぱ…ハルはハルだな…。なんでもお見通しか…。敵わねぇな…。)