幸せの定義──君と僕の宝物──

マンションに着いたリュウは、エレベーターに乗って、自宅のある階で降りた。

部屋の鍵を出そうとポケットの中を探りながら歩いていると、部屋の前に誰かが立っている事に気付いた。

「…ハル?」

リュウは慌ててハルに駆け寄った。

「どうしたんだよ、急に…。来るなら来るで、連絡くらいしろよ。」

ハルは何も言わずうつむいている。

リュウは玄関の鍵を開け、ハルを連れて部屋の中に入った。

「飯食ったのか?」

リュウが尋ねると、ハルは黙って首を横に振った。

「食ってねぇのか…。ずっと待ってたのか?」

ハルはまた黙ってうなずいた。

「腹減ってんだろ?なんか食いに行くか?」

「…この前はごめんね、とーちゃん…。」

ハルの小さな呟きに、リュウは微笑んだ。

「ん…?今日は随分しおらしいんだな。」

リュウが頭を撫でると、ハルはリュウの胸に顔をうずめた。

「ハルは、とーちゃんが好きだよ。とーちゃんは…ハルの事、嫌い?」

消え入りそうな声で、ハルが尋ねた。

「嫌いなわけねぇだろう…。オレはハルがちっちゃい頃、ずっと面倒見てたんだぞ?」

リュウが答えると、ハルはリュウのシャツをギュッと握りしめた。

「ハルは…もう小さい頃のハルじゃないよ。」

「…そんな事わかってる。でも、ハルはハルだろ?」

「それって…ハルはずっと…とーちゃんにとっては、姪のハルでしかないって事…?」

絞り出すような掠れた声で、ハルが尋ねた。

「……現実的にそうだろ?」