「………寒いな……」



私は薄いカーペットの上に座り込み、自分の身体を抱えて呟いた。


上京してきたときに借りたこの六畳一間のワンルームは、ほとんど寝るためだけに帰ってくる部屋で、ろくな暖房器具も置いていない。


ひどく殺風景で無機質で、寒々しい部屋だ。


でも、今までは、そんなことにも気がついていなかった。



寒さに肩を撫でていると、ふいに、さっきのぬくもりを思い出した。


ルイに抱きしめられたときの、優しいぬくもり。



あんなにあたたかいものに包まれたのは、初めてだった。



そう思った瞬間―――ぞっとした。


取り返しのつかないことになった、と怖くなった。



知りたくもなかったのに、私は知ってしまったのだ。


気づいてしまったのだ。


私は寒かったのだと。



ルイに抱きしめられて初めて、凍えるほどに寒かったことに、気づいてしまった―――。



それは、震えがくるほど恐ろしいことだった。