しばらくお互い無言で歩いている。
といっても、私は余裕がないだけなんだか。
人が多くて見失わないように必死。


「俺、魁斗。シンガーソングライターなんだ」

貴方は自分が大学生のこと、今人気の出てきたシンガーソングライターということを聞かせてくれた。
家に着くと、すぐに上がらせてくれた。
リビングで待っててと言われて待っていると魁斗さんはギターの準備をしていた。
椅子に座って一つ深呼吸すると、ギターを弾き始める。
心地いい、優しい音。


『僕は君に恋をした
でも君は他の人を見ていた
悲しいけれど仕方がない
両思いなんて簡単じゃない

雨上がりの空を見上げて
虹が出てる、と指差して
伝えたい人がいるけど
僕は逃げ続けた

目を閉じて自分に問いかけても
やっぱり同じ答えばかり
僕は君が好きなんだ
君じゃなければダメなんだ

遠い昔の口約束
君はきっと忘れているだろう
僕はずっと覚えているよ
いつも君を見ているよ』

なんだか少し切なくて、でも、簡単な歌で。きっと、魁斗さんだから歌えるんだと思った。
アイドルが歌ったところで深い歌にはならないし、演歌でもない。
あなたにそっくりな歌でした。