ユメセカイ

シュードは、かなり驚いた顔をしている

こいつのこんな表情、初めて見た気がするな。いつも貼り付けたような営業スマイルだし。まあ、それは俺も他人のことは言えねえけどな

「その方は、もしやミモザ様、でしょうか…?」

驚きと、戸惑いが混じった声


「ああ」

こんな驚いた表情のシュードはなかなか見られないから、少し面白い


「ど、うして」

「拾った。森ん中で」

「本当に?」

「本当だ」

まあ、助けて拾ったんだが


待てよ、魔獣たちはミモザを守るために戦っていたわけだし、あれは助けたことになるのだろうか。
まあいい、どちらにせよ拾ったのは俺だし



「この娘を客間へ送る。シュード、侍女と警備の用意をしろ」



「・・かしこまりました」

驚きをまだ引きずっているのか、いつもより返事がワンテンポ遅くなっている


シュードが、走り去り俺はミモザを客間へ運んだ


客間のベッドにそっと置く。

長く、艶やかにきらめく黒髪がベッドの上に広がる

思わず襲いたくなってしまったが、女神と呼ばれるこの娘にそんなことをしたら、他国から戦争をふっかけられる原因と充分なり得てしまう

拳を握り締めて堪えた


暫くして侍女が2人入ってきた。 1人は古株の使用人、もう60になるお婆さんだ。
そしてもう1人は婆さんの娘で、幼い頃からここで働いている


2人ともかなり驚いた表情をしている
まあ、無理もない、あのシュードに俺まで驚いたのだから


「後は任せた」

「「かしこまりました」」

親子使用人のお辞儀を片目に、この部屋を去る


俺には芸術鑑賞の趣味はない。
公務のために知識としては芸術品について知ってはいるが、美しいともずっと見てみたいともおもったことがない

人間に関しても同じだった

しかし、あの娘は…


ミモザは、ずっと見ていたいと思った


あそこまで美しいものは、いないだろう