五分ほどで弾き終え、鍵盤から手を離した。


「…すげぇな…まさか柚がピアノ弾けたとは」

「意外でしょ?私がピアノ弾けるってこと、稀衣しか知らないんだから」

「意外っていうか……。弾いてる柚、キレイだった。」

「えっ…」


真剣な表情で見つめられ、思わず目をそらしてしまう。


「もっ、もうでよっか。ここの部屋暑いからさ!さ、私の部屋いこ…」

すると晴輝はフッと笑った。

「照れてる」

「て、照れてない!」

本当は照れてるんだけど。

おそらく紅くなってるだろう私の顔を、隠すようにそそくさと部屋を出た。