8月とメープルシロップの相性

一位は八桐だった。

止まると吹き出してくる汗を腕で拭って、一位の旗の前で呼吸を整える八桐がこちらを見てニヤッとした。

「おつかれ…、早いなお前」

「日頃の成果だよ」

汗が垂れて暑そうだというのに、分泌される爽やかオーラは揺るぎない。

「でも、葉月に勝てたのはちょっと嬉しいかもしれない」

「なんだそりゃ」

「…若ちゃんが勝ちたがってたから」

「足の早さならあいつに圧勝なんだがな」

「そういえば、若ちゃんが本気で走ってるのみたことないかも」

「あー、驚くぞ」

「へー…、あ、次から女子みたい」

「楓は100mでんの?」

「他の如何なる競技も拒否してたよ」

「あー、目に浮かぶわ」

100mを希望したのも競技時間が短いからだろう。

「あれ楓だ」

「本当」

楓がスタートする。

スタートダッシュがうまくいったようで、勢いを殺すことなくスムーズに走り出す。

「意外に早いね」

「最初だけな」

八桐がえっ、と言った頃には、順位が落ち始める。

カーブを曲がりきる前に減速して、距離を詰められ、最後の直線で最下位となってゴールした。

「…なにいまの」

「100m全力で走り切る体力がないんだってよ」

「なにそれすごいw」

大胆に最下位なくせして大袈裟なくらい肩で息をする楓が、順位別の列の最後に加わった。

あいつは体育祭終了まで参加していられるんだろうか。

少し心配になった。