「はっ、とりくん、」 もう一度呟いた声は裏返った。 体育館シューズを持っていないほうの右手で、小さく、小さく手を振る。 もう、何とでもなれ。 そんな半分やけくその気持ちで、だんだんと大きく手を振る。 最終的に、腕全体を振っていたわたし。 服部くんは、驚いたように目を見開いていたけど。 不意に、口角を上げて。 「……石川」 ゆっくりと、手を振り返してくれた。