「……石川、」



低い声がした。

はた、と目を覚ます。

……“目を覚ます”?


「……わっ」


慌てて顔を上げると、視界に入ったのは服部くんの顔。

驚きと恥ずかしさで固まっていると、逸らされた視線。

それが、今日のお昼休みのときみたいで、やっぱり少し寂しいと思う。

けど。


「はっ、とり、くん……」

「……」

「い、今、何時ですか……?」


そんなことは、やっぱりおこがましくて言えない。

その代わりに出てきた言葉は、何とも無難なものだった。

でも、そんなのは服部くんに聞く必要がないというか、時計を見たら早い話で。

無言のままの服部くんの向こうに見えた掛け時計は、ちょうど6時を指していた。