凍りつく。

血が、全身が。

心までもが。

声に驚いて振り返った金髪男の顔面に向かって、アオは思い切りスイカを投げつけた。

が、『キャっ』なんて、野太いけれど可愛らしいという矛盾した悲鳴を上げて、男がスイカを受け止める。

全力投スイカをキャッチされたコトにも驚きだが、『キャっ』にはもっと驚き。

しかし、そんなのはどーでもイイ。
大切なのは、一つだけ。

スイカは両手で受け止められた。

つまり、透子は解放された。

その機を逃さず、風よりも疾く滑らかにベッド脇へ移動したアオの手が、金髪男の首筋に伸びる…


「アオ!」


身体を揺らす、柔らかな衝撃。
鼓膜を揺らす、自分の名を呼ぶ愛しい声。

凶器と化して男の喉を握り潰そうとしていた指を止めたのは、ベッドに膝立ちになり、アオの胸に飛びついた透子だった。

彼女のぬくもりが、冷えきった心に染み渡る。

とんでもない過ちを犯すトコロだった。
美しい黒水晶に、人がただの肉塊に変わる瞬間を、映してしまうトコロだった。

守りたいのは、彼女の命だけじゃない。

守りたいのは、無自覚のまま人を救える、その穢れなき魂。

なんとか透子に血を見せることなく、侵入者たちを排除するためには、まず…


「よしよし、コワかったね?
後でしーちゃんがイヤって言うほど抱きしめるから、とりあえず放して?」


アオは透子の肩を掴み、そっと引き剥がそうとした。