「嬉しいな、しーちゃんが笑ってくれて。
感情表現の乏しい、無表情キャラになっちゃったのかと思ってた」
透子の手を引いて隣の部屋に導きながら、アオは心から嬉しそうに微笑んだ。
「そんなバカな。
楽しければ笑うし、悲しければ泣く。
人間なンだから」
「アハハ、そりゃそーか」
笑って、ナニもないリビングを横目にキッチンに入って、冷蔵庫から食材を取り出して…
「ところで…
いつから私を知ってたの?」
「へ?」
包丁を握って玉葱を刻み始めた透子の言葉に、アオは固まった。
「さっきからアオは、昔の私を知ってるような話し方をしてる」
手を止め、真っ直ぐに見上げてくる彼女からは、またも表情が消えている。
まじでコエぇよ、このコ。
いや、コッチが迂闊すぎンのか。
浮かれてばっかもいらンねーな、こりゃ。
「フフフ… バレてしまったか。
真実を語る時が来たようだな…」
アオは額に手を当て、低い含み笑いを漏らした。
そして人参を握りしめ、透子の澄んだ瞳を真正面から熱く見つめて…
「そう、実は俺は、ランドセルを背負った幼いしーちゃんに一目惚れしたあの日から、ずっと君だけを見続けてきた、言うなればスーパー・ストーカーなンだ!!」