その嘘に踊れ


渋谷の交差点を渡る前から、私は悪魔の存在に気づいていた。

顔の半分がレイバンで隠れていたし、ますますイケメン化が進行していたが、一目でアオだとわかった。

あぁ…

お馴染みの、胸の軋みと呼吸困難に襲われる。
彼を中心に視界が狭まっていく。

だが、コレは呪いなんかじゃない。

芽生えた心が成長しつつある、今の私にはわかる。

隣の席のクラスメートに半ば無理矢理押しつけられた、お薦め少女漫画をパラパラと読んだ今の私にはわかる。

確かにコレは、恋。

自覚もないまま出逢ったあの日に落ちていた、叶うはずもない初めての恋。

信号なんて無視して。
突進して。
タックルぎみに抱きついて。

『好───き───だ───!!!』

と叫びたい衝動に駆られたが…

ソレ、ダメなやつぅぅぅぅぅ!!!

鎮まれ、私のスイーツ(笑)脳ぉぉぉぉぉ!!!

もう二度と会わないンでショ!?
あの日の決意を思い出して!?

大体、子供の頃にちょっっっと遊んだだけの私を、アオが覚えてるワケねェじゃん!?

そうそう。
他人だ、他人。

俯きがちにスクールバッグを抱え、いつものように人波に紛れ、交差点を通過して…

ハイ、無理デシタ!
一瞬だけ、顔を上げちゃいマシタ!

視線が絡んだような気がしたケド…

『気がした』だけなンだよ、きっと。
今度こそ、もう会えないンだよ、きっと。

ありがと、偶然。
そしてさよなら、初恋…