その嘘に踊れ


モブでいることをいつも心掛けていた私には、親しい友人はできなかった。

黒木が出した条件とか。
万が一『シズク』としての素性がバレた時に親しい知人にまで及ぶ、様々な危険の回避とか。

『友人を作らなかった』理由を挙げるコトもできるのだが…

『できなかった』が正解だろうな、うん。

だって会話が難解すぎる。

『CECIL McBEEとINGNIって、ちょいちょいカブるよねー』

とか言われても、リアルに

『ナニソレ、オイシィの?』

ってなるし。

『ねェ、知ってる?
イケメン俳優の○○って、戦隊モノ出身なンだよー』

とか言われても、

『戦隊って…自衛隊じゃなくて?
日本にも、非公式のゲリラ部隊があるの?』

ってなるし。

お互いキョトン顔で終了デスYO!

それでも、熱で欠席した私のために、授業のノートをとってくれたクラスメートがいた。

回ってきた『委員』というシステムに戸惑う私のために、手を貸してくれたクラスメートがいた。

そんな、彼女たちにとっては当たり前なのであろう小さな優しさに触れる度、喜びも悲しみもなかったはずの私の心はあたたかなぬくもりに満たされた。

そして…

言い様もない苦悩に満たされた。

私はこんなに優しい人間たちの命を、そうとは知らないまま奪ってきたのだ。

何人も。
何十人も。
何百人も。

殺して、きたのだ。