私は死んだ少女に重しをつけて、海に沈めた。
そして下りた崖を再び登り、海と、薄い煙を立ち昇らせる大破した車を見下ろした。
無傷じゃオカシィからね?
他の誰かが事故に気づく前に、ココから飛び降りよう。
後々、なりすましがバレて面倒なコトになるかも知れない。
そもそもなりすますコトなんて出来なくて、死体遺棄も発覚して、目を覚ませば刑務所かも知れない。
いやいや、それ以前に、目を覚ますコトすら出来ないかもよ?
これは賭け。
勝てば、コチラの世界で生きる、本物の存在証明が手に入る。
『芦原透子』が残した血溜まり目がけ、私は躊躇うことなく宙を舞った。
身体を襲った衝撃で、瞬間的に止まる呼吸。
嫌悪感を伴う、骨が砕ける鈍い音。
そして、ブラックアウト。
どれくらい意識を失っていたのか…
私が目覚めた場所は刑務所ではなく、まして地獄でもなく、病院のベッドの上だった。
ケガの具合?
見事にミイラだよ。
露出してる肌がないくらい、包帯グルグル。
受け身ナシの落下、ダメージ半端ねェ。
だが、賭けにはひとまず勝利した。
私の腕には、『Toko Ashihara』とプリントされたリストバンドが巻かれていた。
これだけの惨状だ。
退院して日本に入国した後、療養の名目でしばらく表に出なくても、誰も怪しんだりはしないだろう。
『母親の死と事故のショックでちょっと記憶障害』とか、『ケガの後遺症でちょっと面変わり』なんて理由で、軽い知人程度なら誤魔化せるだろう。



