その嘘に踊れ


まず必要なのは、私の存在証明だろう。

国籍を偽造しちゃうか?
でもって、ドコかの孤児院にでも潜り込むか?

それなら、モンゴロイドな私はアジアに飛ぶべきだったか?

犯罪混じりとはいえ明るい未来予想図に思いを馳せながら、潮風に髪を揺らして某国の海岸沿いの道を歩いていた私の目の前で…

スピードの出しすぎでカーブを曲がりきれなかった一台の車が、ガードレールを薙ぎ倒して落ちていった。

事故デスネ。
ソーデスネ。

この下は崖。
そして、海。

もうダメだろうな、と思いながらも、私は身軽に崖を下りていった。

息があるなら、助けを呼んでやらなくちゃ。

だが…

うん、もうダメでしたね。

フロントガラスに頭を潰された女も。

サイドウインドウから投げ出された挙げ句岩場に叩きつけられた、私とよく似た髪型、私とよく似た体型、私とよく似た顔立ちの、アジア系の少女も…

おやおや?

これはひょっとして?

私は歪んで開いた車のドアから女のバッグを引っ張り出し、中を漁った。

パスポート、携帯電話、国際免許証、保険証、万一の時のための緊急連絡先と英文診断書…

ふむ、日本人ツーリストか。

どうやら私と死んだ少女は血液型も同じ。
その上、今ある情報で推察すると、女と少女は他に身寄りがなさそう。

おやおやぁ?

これはひょっとしてぇ?

私はこの少女、『芦原 透子』になりすませちゃうンじゃねーですかぁぁぁ???