その嘘に踊れ


組織はすでに、ターゲットが死んでいないコトを知っていた。

つまり私が任務に失敗したコトを知っていた。

そして手ぶらで戻った私を叱責し、拷問をくわえようと待ち構えていた。

だが今の私には、大人しくソレを食らう義理はない。

腕を掴もうとする、私を管理していた男の首を、拾った石の鋭い尖端で掻き切って…

私は私のための戦いを開始した。

非常事態に気づいていない男の首をへし折り。

非常事態に気づいて焦る男の脳天を撃ち抜き。

殺して、殺して、殺して…

自分たちが育てたクセに、自分たちの手には負えなくなっていたモンスターに、その場にいた組織の男たちは完敗した。

青い瞳の少年は、ある意味本物の悪魔だったのかも知れない。

鎖に繋がれ、飼われていた殺戮マシーンを、野に解き放ったのだから。

そう、私は放たれた。
自由を得た。

ココからドコに向かうかは、もう決まっている。

名を呼んでくれる人がいる世界へ。
ただ球体になっただけの、不純物を多く含む水を綺麗だと思える世界へ。

アオが暮らす世界へ…

だから、あの廃墟となった中層集合住宅に行こうカナー、とか。
そこで待ってたら、また遊びに来るンじゃないカナー、とか。

ちょっと考えちゃったンだケドね、うん。

やめとく。

だって、今私が抹殺した全てが、組織の全てであるはずがない。
いずれ暗殺者が差し向けられる。

いや、たとえ組織を殲滅したところで、殺戮マシーンであった私には永遠に死の影がつきまとう。