その嘘に踊れ


私は『r09u-E』。
それは名前ではなく、製造番号だ。

名前とは、優しい声でその名を呼んでもらえる者だけに与えられるモノだろう?
兵器であって人間ではない私が、手に出来るモノではないだろう?

私は視線を上げ、悪魔を観察した。

外見ではなく、その表情を。

なんつーか…
微妙な面持ち。

不安なような。
でも、どこか期待しているような。

たぶん、

『名前、気に入ってくれたかな?
それともダメかな?』

こんなカンジ。

なるほど。

この悪魔は、本気で雨の雫を綺麗だと思っているようだ。

そしてその綺麗だと思うモノの名を、本気で私に与えようとしているのだ。

リカイフノウを理解した瞬間、兵器は壊れた。

そしてその残骸の中から、一人の少女が立ち上がる。

私は『シズク』。
人間だ。

親に名を呼ばれ笑顔を見せていた、同じ年頃の子たち。
私も、彼らと同等の存在になったのだ。


「うん!
私は『シズク』!」


私は笑った。

あの子たちと同じように、安心しきって。

そんな私を見て、悪魔…アオも笑った。

あの親たちと同じように、優しげに。

私にはもう、アオしか見えなかった。
私の世界には、私とアオしかいなかった。