その嘘に踊れ


いつも通りの作業をいつも通りサクサクと進めていた私は…

ふと道路を見下ろし、気づいた。

雨具を脱ぎ、建物に入ってくる人影に。

誰だ?

老朽化して住人がいなくなった中層集合住宅に、いったいなんの用だ?

ココに居ついたホームレス?
ココを根城にしている犯罪者?

それとも、暗殺を阻止しにココまでやって来た、別組織の…

いずれにせよ、邪魔者。

早々に退散するなら、それで良しとしよう。

退散しないなら、殺してしまおう。

私は組み立て中のライフルを置いてその場を離れ、割れたコンクリートの隙間から音もなく階下に舞い降りた。

物陰からコッソリ様子を窺えば…

うん。

きましたね。
上ってきましたね。

なんかキョロキョロしながら。

襟がビローンと伸びきったシャツと、明らかにサイズの合っていないダブダブのパンツ。
浅黒い肌に映える、青い瞳と銀の髪。
幼さを残しながらも、まるで彫刻のように整った精悍な顔立ち。

おそらく15才にもなっていない、美少年…

うーん…

なんだろ、アレは。

返り血を浴びるようなヘマをしない私は、状況に合わせて背景に溶け込める格好で任務に出るが、通常、殺しを生業とする者は黒を基調とした服装を好む。

確かにあの少年は黒っぽいケド…

どっちかっつーと、小汚くね?
動きも、あの『キョロキョロ』が素人臭くね?

別組織の刺客って線は、限りなく薄くね???