『隣県の山にある、倒産した産廃業者が所有していた建物に、今夜11時』

パチンコ店で営業をサボるビジネスマンに扮していた連絡役の『Unnamed Children』が探りだした、アイツらとクライアントが接触する場所と時間だ。

廃タイヤ、ガレキ、元はなんだかよくわからないモノの燃え殻などが、分別されることなくごちゃ混ぜに野積みされた敷地内にはライトもなく、闇夜に紛れて忍び込み、隠れるにはもってこい。

でもね、危ないの。

錆びた鉄筋が飛び出したりしてて、うっかりすると突き刺されそうなの。

古いドラム缶なんかも大量に転がってて、うっかりぶつかったらヤバいガスが噴き出して死体が動きだしちゃうとか、ソレ、なんてバタ○アン?的なコトになりそうなの。

追っかけっこするには、向いてないわな。

だが、問題ない。

逃げる気はないのだから。

さっきから男たちが出入りしている、事務所兼資材置き場らしい大きな建物。

クライアントがやって来て、アソコに入れば。

堂々と乗り込んでやろう。

いきなり殺されるコトはない。
シズクの居場所を知りたいだろうから。

堂々と乗り込んで、アイツらとクライアントに近づいて、取り押さえられる前に『ざまぁ』なんて笑って中指を立てて…


(全てを巻き添えに、死んでやる)


腐臭が漂う古畳の山の陰に身を潜めたアオは、ニヤリと唇の片側を歪めた。

その笑み、言葉にするならまさに『壮絶』。

彼の黒いハイネックカットソーの下には、粘土状で容易に形を変えられるプラスチック爆薬…C-4が巻きつけてある。

すでに雷菅はブっ刺されていて、起爆スイッチを押して電気を流しさえすれば、いつでも『Bomb!』状態だ。