その嘘に踊れ


多くの命を奪った手。
洗っても落ちないほど血に染まった手。

そんなことすらも忘れ、俺はシズクに手を差し伸べる。


「なにして、遊ぶの?」


「え?えと…えと、ね…
ドアノブの数を数えるの!」




ハイ?

そりゃまた随分、地…渋い遊びだ。
ほんとに楽しい?

いや、楽しい。
MAX楽しい。

シズクが、少しひんやりした小さな手で、俺の手をキュっと握ってくれたから。

『ドアが壊れてドア枠から外れていても、ドア板にくっついてるドアノブはまだドアノブだから、一つ』とか。

『ドア板自体がブっ壊れていてドアノブが落ちていれば、もうドアノブじゃなくただのノブだから、ノーカン』とか。

ドアドアノブノブしていてよくわからなくなってくるルールで、シズクと遊ぶ。

数を忘れちゃ大変だからとシズクが言い出し、いつの間にか『ドアノブ探し』が『筆記用具探し』に変わってたり。

バスタブに溜まったままの水の臭いに、顔を顰めて逃げ出したり。

戸棚から出てきたゴキブリに驚いて半狂乱になり、窓から飛び立とうとするシズクをなんとか取り押さえたり。

笑って、笑って、笑って…

気づけば雨はやんでいた。

窓から空を見上げたシズクが


「そろそろ戻らなきゃ」


と言った瞬間、俺は現実に引き戻された。