多くの命を奪った手。
洗っても落ちないほど血に染まった手。
そんなことすらも忘れ、俺はシズクに手を差し伸べる。
「なにして、遊ぶの?」
「え?えと…えと、ね…
ドアノブの数を数えるの!」
…
ハイ?
そりゃまた随分、地…渋い遊びだ。
ほんとに楽しい?
いや、楽しい。
MAX楽しい。
シズクが、少しひんやりした小さな手で、俺の手をキュっと握ってくれたから。
『ドアが壊れてドア枠から外れていても、ドア板にくっついてるドアノブはまだドアノブだから、一つ』とか。
『ドア板自体がブっ壊れていてドアノブが落ちていれば、もうドアノブじゃなくただのノブだから、ノーカン』とか。
ドアドアノブノブしていてよくわからなくなってくるルールで、シズクと遊ぶ。
数を忘れちゃ大変だからとシズクが言い出し、いつの間にか『ドアノブ探し』が『筆記用具探し』に変わってたり。
バスタブに溜まったままの水の臭いに、顔を顰めて逃げ出したり。
戸棚から出てきたゴキブリに驚いて半狂乱になり、窓から飛び立とうとするシズクをなんとか取り押さえたり。
笑って、笑って、笑って…
気づけば雨はやんでいた。
窓から空を見上げたシズクが
「そろそろ戻らなきゃ」
と言った瞬間、俺は現実に引き戻された。



