その嘘に踊れ


「『シズク』?」


「うん。
雨の雫、君の周りで、キラキラして…
とっても、綺麗だ」


「雨の雫… キレイ?」


天使は濡れた髪に触れ、手に滴った雨粒を見て首を傾げている。

ありゃりゃ…

日本語のボキャブラリーがまだ貧困すぎて、ちゃんと伝わってないみたい。

綺麗なのは、雨の雫単品じゃないンだケド。
綺麗なのは、雨の雫を纏って光輝く君なンだケド。

気に入らないカナ…

天使はしばらく掌の上の雨粒を眺めて、それから視線を上げ、息苦しくなるくらい長い間俺を見つめて…

ヘニャっと笑った。

そりゃもう黒水晶が跡形もなく消えるくらい、ヘニャっと。


「うん!
私は『シズク』!」


萌え禿げるわ。

ナンナンデスカ?神サマ、コノヤロー。
アンタ、とんでもねー芝刈り機をこの世に送り出しやがったな。

俺、まだ十代のハズなのに、一気に萌え禿げるわ。

毛根壊滅の危機を感じながらも、俺もヘニャっと笑っていたと思う。

そりゃもう天使…シズクが、青いと言った瞳が跡形もなく消えるくらい、ヘニャっと。

俺にはもう、シズクしか見えなかった。
俺の世界には、俺とシズクしかいなかった。

たぶんコレが、恋。

叶うはずもない、初めての恋。