透子は愛らしく首を傾げた。

別人のようなアオの物言いを、まるで気にするコトなく。


「『アオじゃない』?
アオじゃない、声が」


あー…うん、そうね…

いやいや、ダメダメ。

そんなコト言っちゃ、目的が果たせなくなっちゃう。


「嘘だよ」


精一杯の冷ややかな言葉のナイフを、アオは透子に突きつける。


「全部、嘘だよ。
その名前も、おまえを守るなんてのも。
誘拐したのは、たまたまおまえの素性を知って、面白そうだと思ったからだ。
親しげにしてやったのは、おまえに何らかの価値があると思ったからだ」


傷つけろ。
傷つけろ。


「けど、おまえのご立派なオヤジがしらばっくれりゃ、認知されてないガキなんて大した金にならねェし。
犯して楽しもうにも、その凹凸のない幼児体型じゃ勃たねェし」


彼女が、俺のコトなんて早く忘れたいと願うように。
彼女が、二度と俺の名を呼ばないように。


「だからもう、いらない。
おまえを飼ってる意味がない」


彼女の心に残る『アオ』を、殺して…


「信じてたのに、なんて面倒なコト言うなよ?
最初に教えてやったハズだ。
俺は嘘つきだって。
心を許すなって」